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防衛費11兆円時代——「安全保障」と「生活保障」の優先順位を問う

2027年度までにGDP比2%、総額43兆円――日本の防衛費は戦後最大規模の拡大を続けています。「台湾有事」や「中国の脅威」という言葉が飛び交う今だからこそ、私たちは一度立ち止まって考えてみたいと思います。本当に今、最優先すべきは軍事力の増強なのでしょうか。実質賃金が10ヶ月連続でマイナスを記録し、日々の暮らしが厳しさを増す中で、「国の守り(安全保障)」と「私たちの暮らし(生活保障)」の優先順位について、改めて一緒に考えてみませんか。

1. 防衛費急増の背景――何が起きているのでしょうか

数字で見る防衛費の変化

日本は長らく「防衛費はGDP比1%枠」という目安を守ってきました。しかし、その方針が2022年12月の安保三文書改定によって大きな転換点を迎えました。「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」にあるという認識のもと、5年間で43兆円という巨額の予算を使って防衛力を整備する計画が進められています。

年度防衛費 (当初予算)GDP比備考
2022年度約5.4兆円約1.0%従来の水準
2025年度約8.5兆円約1.8%関連経費含め9.9兆円
2027年度 (目標)約11兆円規模2.0%目標値

米国からの圧力という現実

見落とせない要素として、米国からの負担増要求があります。当時のトランプ政権以来、同盟国に対して防衛費の大幅増額が繰り返し求められてきたという背景があります。日本の防衛費増額が純粋に「自主的な判断」なのか、それとも「外圧への対応」なのか――この問いに対する見方は、立場によって分かれるところです。

しかし、外圧の有無にかかわらず、国の予算をどう使うかは、主権国家として私たち自身が決めるべき問題はずです。その原則は、忘れてはならない大切な視点ではないでしょうか。

2. 「台湾有事」は本当に切迫しているのでしょうか

本当に起こるのか?という議論

防衛費増額の最大の根拠とされているのが「台湾有事」です。しかし、それが本当に起こる確率(蓋然性)については、専門家の間でも慎重な意見が見られます。

立場                  主な見解
切迫派中国の軍事力増強は目立っており、いわゆる「2027年問題」を警戒すべきとしています。
※「2027年問題」は米国防総省・情報機関高官の発言に基づくものであり、具体的な情報源や分析手法は公開されていません
慎重派中国も経済的なリスクを理解しており、実際に武力を使うコストは極めて高いと分析しています。
懐疑派「脅威」という言葉が、予算を獲得するためなどに政治的に利用されている側面があると指摘しています。

大切なのは、「脅威」という評価が、政策を正当化するために過度に利用されていないか、冷静に見極めることでしょう。もし不安を煽ることで予算を獲得するようなことがあれば、それは民主主義の健全さを損なうことになりかねません。

軍事力で「抑止」は成り立つのでしょうか

そもそも、日本が防衛費を増やしたとしても、中国との軍事バランスで優位に立つことは現実的に難しいと言えます。2024年の軍事費で見ると、中国は推定3,140億ドル、日本は553億ドル。そこには約6倍という圧倒的な差があるからです。

軍拡競争に参加することは、勝ち目の薄いゲームに巨額の国費を投じることを意味してしまう――そんなふうには考えられないでしょうか。

3. 防衛費を「生活保障」に回したら何ができるでしょう

暮らしへのシミュレーション

仮に防衛費の増額分(年間約4〜5兆円)を他の政策に振り向けた場合、私たちの生活には以下のような選択肢が生まれます。

政策オプション必要財源 (年間)実現可能性 / 備考
年収の壁 (178万円) 引き上げ約7〜8兆円△ (防衛費増額分だけでは不足ですが、大幅な補填が可能です)
食料品の消費税ゼロ約1〜2兆円〇 (十分に実現可能です)
給付付き税額控除の導入約2〜3兆円〇 (低所得の方への手厚い支援が可能です)
教育無償化の拡充約2〜3兆円〇 (大学授業料無償化などが視野に入ります)

防衛費の増額を凍結、あるいは見直すだけでも、これら複数の生活支援策が現実味を帯びてきます。これは「どちらの未来を選ぶか」という、私たち自身の価値判断の問題とも言えるでしょう。

4. 「経済力こそ国力」という視点

実質賃金10ヶ月連続マイナスの現実

2025年現在、日本の実質賃金は10ヶ月連続でマイナスを記録しています。物価の上昇に賃金が追いつかず、私たちの購買力は下がり続けているのが実情です。

この状況下で軍事力に巨額を投じることは、**「足元が崩れているのに屋根を補強している」**ようなものではないでしょうか。

「1億総中流」の教訓

昭和の高度成長期、日本は「1億総中流」と呼ばれる分厚い中間層を形成しました。それは軍事力ではなく、経済力によって築かれた国際的地位だったはずです。

当時の日本は、防衛費をGDP比1%に抑えつつ、その余力を経済成長と国民生活の向上に充ててきました。その結果として、世界第2位の経済大国となり、国際社会で確固たる地位を築いたという歴史があります。

真の「国力」とは何か――この問いに、歴史は一つの明確な答えを示しているように思えます。

5. 唯一の被爆国として

平和国家としてのアイデンティティ

日本は世界で唯一、戦争で核兵器を使用された国です。広島・長崎の悲劇は、日本の戦後外交や安全保障政策の原点となってきました。

憲法9条、専守防衛、非核三原則――これらは単なる「制約」ではなく、日本が国際社会で信頼を得てきた大切な基盤です。

安易な軍拡路線への転換は、この信頼を損なうリスクをはらんでいます。「平和国家・日本」というブランドは、経済外交においても大きな資産であることを、心に留めておくべきです。

おわりに――問われているのは「どのような国でありたいか」

防衛費の増額か、国民生活の安定か――これは単なる予算配分の問題にとどまりません。日本という国のあり方そのものが問われていると言えます。

「脅威」を強調し、不安を煽り、軍事力増強を正当化する。その流れに、私たちはただ無批判に乗ってしまってよいのでしょうか。

多くの経済学者が指摘するように、国民生活の安定こそが持続可能な国力の基盤であるはずです。足元の生活が崩れてしまえば、守るべき「国」の存立さえ危ういものになりかねません。

最終的にこの問いに答えるのは、私たち一人ひとりの国民です。自らの頭で考え、選択すること。それこそが、民主主義の本来の姿だと言えるでしょう。

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