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国道3号の空洞、見つけたのは名も知らぬ通行人だった

7月15日の夜、鹿児島市小山田町の国道3号でのことである。午後8時35分ごろ、「側溝のふたが落下している」と、通行人から鹿児島国道事務所に通報があった。

このあたりは市街地から少し外れ、夜ともなれば車も人通りも多くない。暗い道端の、側溝の蓋一枚のずれである。気づかずに通り過ぎたとしても、誰にも責められない。ところがこの通行人は気づき、しかもわざわざ国道事務所に知らせた。

通報を受けた側の動きも早かった。職員が現場を確認すると、路面の下に長さ7メートル、幅2メートル、深さ2メートルの空洞が見つかった。片側1車線、幅8メートルの道路だ。国道事務所は午後10時50分から約1.7キロを全面通行止めにし、翌朝までの約11時間で空洞を埋め戻し、再舗装まで済ませた。原因は、側溝の水を集める升の底から水がしみ出し、路面下の土が流されたためとみられている。事故もけが人もなかった。見事な対応だったと思う。

ただ、少し考えると落ち着かなくなる。深さ2メートルの空洞の上を、その日まで車が普通に走っていたのだ。崩れる前に見つかったのは、点検でも調査でもなく、夜道の蓋一枚に気づいた一人の通行人がいたからである。

思い出すのは、昨年1月の埼玉県八潮市の陥没事故だ。あちらは下水道管の破損、こちらは道路の排水施設と、壊れたものは違う。それでも、地下で水が土を少しずつ運び去り、路面の下が空になり、その上を走る人には知りようがない、という構図は同じである。八潮では、気づいたときには道路が抜け、トラックごと運転手が落ちた。国はあの事故を受けて全国の下水道管の重点調査を進めているが、対象は管径2メートル以上の下水道管であり、今回のような側溝や升は含まれていない。

では、対象外の道路は何もしていないのかといえば、そんなことはない。直轄国道では、地中レーダーを積んだ探査車が路面下の空洞を調べて回っている。2024年度は3,079キロを調査し、4,739カ所の空洞を見つけた。もっとも、これは調査対象の約15%にすぎない。全国の道路の下をくまなく見張ることがどれほど難しいか、よくわかる数字である。「なぜ全体調査ができないのか」と責めても仕方がない。

それでも一つ、気になることがある。現場の場所である。通行止め区間の起点となった河頭交差点の一帯は、33年前の8・6水害で甲突川があふれた土地である。河頭中学校付近では2メートルを超える浸水を記録し、河頭浄水場は機能を失った。少し下流の草牟田では、国道3号そのものが約2メートル冠水し、濁流になった。つまりここは、水が集まり、水が暴れたことが記録に残っている場所なのである。地下の空洞がいつどこにできるかを予知することは、確かに誰にもできない。ただ、水に痛めつけられた履歴のある区間の排水施設だけでも、点検の順番を前に持ってくる。そういう予防のかたちであれば、探査車が全国を回り終えるのを待たなくてもできたのではないか、と思うのである。

国道事務所は升を直し、穴を埋め、道路を元に戻した。詳しい原因は調べているというが、その後の発表は今のところない。道路は静かに元通りになり、私たちはまたその上を走っている。

名も知らぬ通行人に、あらためて感謝したい。ただ、感謝と幸運の上に載っている安心を、安心と呼んでいいものかどうか。そこだけが、少し引っかかっている。

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