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再審に「例外」は要りますか

再審制度の改正をめぐり、法案がようやく動き出しました。三度の修正を経て、五月十三日に自民党の合同会議が了承。検察官の抗告を「原則禁止」とする規定が、法案の本体である本則に盛り込まれました。前進と言えば前進です。ただ、「十分な根拠がある場合」という例外規定がつけられています。

なぜ、「全面禁止」ではなく、「例外規定」を設ける必要があるのでしょうか。

法務省の説明はこうです。刑事訴訟法は、保釈許可をはじめ双方に抗告権を認めることを前提に設計されている。一方だけ抗告を封じれば、刑事司法全体の整合性に影響しかねない――。

なるほど、体系の整合性を守るためという理屈です。しかし、その整合性のもとで、袴田巖さんは事件発生から47年もの歳月を奪われました。再審開始決定が出ても検察が抗告を重ね、また何年も先送りされる。それが繰り返されてきた現実です。

体系的整合性のために、人生の47年が奪われる。法律(抗告権)とは何のためにあるのでしょうか。

そもそも再審開始決定とは、裁判所が「新証拠を認め、もう一度審理すべきだ」と判断したものです。その判断に検察が不服を申し立てる。つまり、行政機関が司法の判断に「待った」をかけるということ。これは構造そのものに歪みを生みます。再審法廷で堂々と争えば足りる話です。「十分な根拠」があるというのなら、それこそ再審法廷で堂々と示せばよいだけのことです。

ところが法務省は「十分な根拠がある場合」という例外を、最後まで手放しません。

誰が「十分」と判断するのでしょうか。検察が「十分な根拠がある」と主張して抗告を申し立てれば、その当否を判断するのは結局、裁判所です。つまり例外規定が残る限り、検察は従来と同じく「とりあえず抗告する」という選択肢を持ち続けるわけです。さほど、変わらない景色になるのです。

自民党内からは稲田朋美氏や柴山昌彦氏ら、全面禁止を求める声が上がっていました。議員連盟は超党派で過半数を超えています。それでも法務省は、最後の最後まで例外規定を手放しませんでした。本則への「格上げ」と引き換えに、例外という名の抜け道はしっかり確保する。

そのうえで、木原官房長官は、「与党審査でさまざまな意見をいただき修正したことで、より良い内容になった」と胸を張ります。議員に猛反発され、三度も修正させられた末の「より良い内容」です。当初案はそれほど出来が悪かったということなのか、それとも――。いずれにせよ、味わい深い総括ではあります。

「組織として、検察の権限を一ミリでも譲るわけにはいかない」――そう書いてあれば、いっそ正直で清々しいのですが、表向きの看板は「法体系の整合性」となります。

法案は十五日に閣議決定され、今国会に提出されました。政府・与党は会期末までの成立を目指します。冤罪被害者の救済と、刑訴法の体系美。この二つを天秤にかけて、後者のほうが重いと感じる感性を、私は理解できません。国会審議では、その「例外」の中身こそを問うてほしいものです。

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