SHARE:

野党壊滅の夜に、それでも書き残しておきたいこと ―第51回衆院選、一市民の記録

2月8日の夜。開票の結果をみて、とても気分が悪くなりました。

今回の衆議院選挙の結果は、結局のところメディアの予想通りです。自民党は単独で310議席を超え、1つの政党が単独で衆議院の3分の2を獲得するのは戦後初めてのことです。衆院での再可決権と憲法改正の発議権を手にしました。一方、中道改革連合は公示前の172議席から半数以下に崩壊。安住淳、小沢一郎、岡田克也、枝野幸男といった野党の顔が次々と小選挙区で敗れ、野田佳彦共同代表は「万死に値する」と辞任を表明しました。

私には、自民党がこれほどの支持を集める理由が、どうしても理解できません。高市人気だけで、本当にここまでの圧勝が成り立つものなのでしょうか。解散の大義すらはっきりしない首相に、なぜこれほどの信任が与えられるのでしょうか。これから日本がどこへ向かうのか、強い不安を覚えずにいられません。

ただ、自分が理解できないのは、自分には見えていないなにかがあるのかもしれない。それを見ていこうと思います。

実は、参院選から決まっていたのではないか

振り返れば、この結果は昨年7月の参院選からの一連の流れの帰結だったように思えます。参院選での自民敗北から石破内閣の退陣、10月の自民党総裁選での高市早苗氏の勝利、公明党の連立離脱と維新との連立合意、そして今年1月の通常国会冒頭での電撃解散。この流れを俯瞰すると、高市自民の戦略がいかに周到だったかが浮かび上がってきます。

特に解散のタイミングは計算し尽くされていました。解散から投開票までわずか16日間は戦後最短であり、通常国会の冒頭解散は1966年の「黒い霧解散」以来60年ぶりの異例中の異例でした。真冬の短期決戦は、結党したばかりの中道改革連合に党名を浸透させる時間すら与えませんでした。投票所入場券の発送が期日前投票に間に合わない自治体が続出するほどの強行日程だったにもかかわらず、期日前投票者数は過去最多の2701万人を記録しています。大雪予報を前に有権者が前倒しで投票したという事情もありますが、結果的にこの短期決戦は高市自民にとって最適の戦場設定となりました。

結果として、高市首相の解散判断は「正しかった」と評価される形になりました。でも、改めて解散の経緯を振り返れば、党利党略以外の何ものでもなかったことが、むしろいっそう明確になったとも言えます。首相の解散権に実質的な制約がない日本の制度のもとで、「大義なき解散」がこれほど見事に奏功してしまったことの意味は、今後きちんと検証されるべきです。

中道改革連合の方向性は、間違っていなかったはずだ

中道改革連合の惨敗について、さまざまな敗因が語られています。旧立憲と旧公明の選挙協力がうまく噛み合わなかったこと、比例名簿の処遇をめぐって立民側に「公明にしてやられた」という不満がくすぶったこと、野田氏自身が「時代の独特の空気に覆い尽くされた」と語ったこと。中野洋昌共同幹事長が「党の理念、名前を含め浸透し切れなかった」と振り返った通り、16日間はあまりにも短すぎました。

でも私は、中道改革連合が掲げた「生活者ファースト」という方向性そのものは間違っていなかったと信じています。弱者に目を向けること、国民あっての国家であるという原則、平和を重視する立場。これらは選挙の勝ち負けとは別の次元で、政治が守るべき価値のはずです。問題は理念ではなく、それを有権者に届ける時間と戦略を奪われたことにあります。

斉藤鉄夫共同代表は「中道の灯を燃やし、拡大する体制をつくらなければいけない」と語りました。党の存続すら見通せない状況のなかで、この灯をどう守るのか。これからの動きに注目したいし、躍進に期待したいと思っています。

国民民主党と野党の連携に、まだ希望を託したい

国民民主党の玉木雄一郎代表は、選挙期間中に与党入りの可能性もにじませていましたが、自民が310議席を超えた結果を受けて「意味がないし、必要性がないのではないか」と連立入りを明確に否定しました。「ダメなものはダメと言っていく」「是々非々」の路線を改めて打ち出したことは、この局面では正しい判断だと思います。

野党の惨敗となった選挙ですが、高市自民が単独で3分の2を握ったいま、これからの日本経済は本当に大丈夫なのでしょうか。中国によるレアアース輸出規制の強化、米中対立の激化による半導体サプライチェーンの混乱。外的要因による経済リスクが高まるなかで、スパイ防止法、国旗毀損罪、通称使用の法制化、非核三原則の見直しを含む軍拡路線が優先されていく。憲法改正の発議が現実味を帯び、参院で否決された法案が衆院で再可決される事態も制度上は可能になりました。「責任ある積極財政」を掲げる高市政権が、歯止めなき財政拡大に陥らないか。物価高に苦しむ国民生活を置き去りにしないか。問題は山積みです。

野党がまとまって対峙していくことが、これまで以上に必要になります。中道改革連合の再建がどう進むのか、国民民主党が「是々非々」の中身をどう具体化するのか。この両者がどれだけ実効性のある連携を築けるかが、今後の国会運営を大きく左右するでしょう。

SNS戦略とイメージ選挙への懸念 ―これでいいのか?

もうひとつ、冷静に考えておきたいことがあります。今回の選挙では、高市首相のSNSを活用したイメージ戦略が大きな効果を発揮した一方、討論番組への出演を回避する姿勢も目立ちました。開票特番では太田光氏の質問に対して感情をあらわにする場面もありました。政策の中身よりもイメージが選挙結果を左右する傾向は、今回の衆院選でいっそう強まったように見えます。

内閣支持率57%、企業の7割以上がガソリン暫定税率廃止などの経済対策を支持したという数字も報じられました。こうした「空気」がどのようにつくられ、どこまでが政策への評価で、どこからがイメージの産物なのか。選挙におけるSNS戦略のあるべき姿は、与野党を問わず、今後真剣に議論されるべきテーマだと私は思います。

おわりに ―これからが正念場です

選挙の夜、気分が悪いと書きました。その気持ちはいまも変わりません。けれど、気分が悪いからといって黙っていていい理由にはならないと思います。むしろ、自民党単独で3分の2という戦後未曾有の巨大与党が誕生したいまこそ、一市民として声を上げ続けることの意味は大きくなります。

野田氏は「万死に値する」と言いました。岡田氏は「政策議論なく残念な選挙だった」と落選の弁を述べました。その悔しさは、次の一歩につなげてほしいと思います。これからが正念場です。

あなたへのおすすめ