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食料品消費税ゼロは公約だったのか

2026年2月に始まった社会保障国民会議は、およそ5か月にわたって議論を重ねてきた。しかし、2月の衆院選で最も注目された「食料品の消費税率を2年間ゼロにする」という公約について、7月27日の実務者会議で示されたのは、税率を1%に下げ、中・低所得者に1%相当を給付する「実質ゼロ化」案だった。与野党の合意は得られず、最終判断は高市首相に委ねられた。29日にも実務者会議が開かれたが、5か月の議論を経て残ったのは、首相の判断待ちという状態である。

公約の肝心な部分が先送りされていた

高市首相は今年1月19日の記者会見で、飲食料品を2年間に限り消費税の対象としない方針を表明し、この政策を「私自身の悲願」と述べた。一方で、財源や実施時期は選挙後に設置する国民会議で検討するとした。

つまり選挙の時点で決まっていたのは方向だけで、財源、開始時期、システム改修、2年後の扱いはいずれも白紙だった。減税を公約に掲げるのであれば、必要な財源と実施時期の大枠は同時に示す必要がある。しかし、示されたのは減税の看板だけで、中身の検証は選挙後に回された。この順序が、その後の混乱の出発点である。

「1%+給付」は消費税ゼロではない

議長案は、2027年4月から2年間、食料品の税率を8%から1%へ引き下げ、中・低所得者に1%相当を給付するというものだ。自民党は、税率を1%とする理由を、導入までの速度を重視したためだと説明している。

しかし、これは消費税ゼロの細部を詰めた案ではない。消費者は買い物のたびに1%を支払い、行政は既に把握している所得情報をもとに、給付の対象と額を決める。世帯人数や食料品への支出額は同じ所得でも異なるから、支払った税額と受け取る給付額が一致する保証はない。所得で給付対象を区切れば、対象外の世帯にとって税率は1%のままである。政府案のいう「実質ゼロ」とは、消費税率1%相当分の範囲内で所得に応じた給付を行い、制度全体として負担を相殺していくという考え方である。支払った税額が個人単位で戻る仕組みではない。

しかも、税率変更の仕組みと、既存の所得情報を給付に結び付ける仕組みを同時に用意することになる。速度を理由に0%を避けながら、制度はかえって複雑になっている。

財源は最後まで示されなかった

減税を実施するのであれば、論点は初めから明確だった。減収を何で補うのか、いつ始めるのか、2年で終えるのか、終了後に8%へ戻すのか、システム改修費は誰が負担するのか。なかでも財源をどう確保するかが最大の課題だった。

政府・自民党は、赤字国債に頼らず、補助金や租税特別措置、税外収入の見直しで確保すると説明してきた。だが、どの補助金をいくら削るのかは、いまなお示されていない。財源を検討するために設けた会議で財源が出てこないのであれば、会議が本来の役割を果たしたとは言い難い。0%か1%かを論じる前に、実行できる裏づけがあるのかを示すべきだった。

二つの課題を一つの会議に入れた

会議では、数年かけて構築する恒久的な給付付き税額控除と、当面の物価高に対応する時限的な減税が同時に扱われた。前者は税と社会保障の長期的な制度改革であり、所得税、住民税、社会保険料、マイナンバー、自治体事務を結び付ける作業には時間がかかる。有識者と実務者が論点を整理した意義はある。

しかし後者は、政府が財源を示して政治判断すべき政策である。0%にするか、1%にするか、減税ではなく給付にするか。専門家が決める問題ではない。二つを一つの会議に入れたことが、議論を長期化させ、責任の所在を曖昧にした。国民会議には法案を決める権限も、採決で結論を出す仕組みもない。全会一致を目指す限り、各党の意見を併記して終わるほかなかった。

決定の速度の差

気になるのは、今国会で成立した他の法案との扱いの違いである。自民党は閉会後、64本の内閣提出法案がすべて成立したと発表し、副首都推進法、国旗損壊処罰法の成立と皇室典範の改正を成果に挙げた。ただし、これらはいずれも、自民党が衆院選で前面に掲げた公約ではない。副首都推進法と国旗損壊処罰法は、2025年10月の自民・維新の連立政権合意書に、今国会で成立させると書き込まれた項目である。皇室典範の改正は、衆参両院の正副議長のもとでの各党協議を経てまとめられたものだ。それぞれに経緯があり、選挙後に唐突に持ち出されたとまではいえない。しかし、有権者が投票で選んだ政策というより、連立の取り決めと国会内の協議が先にあったものだ。

ただ、選挙で国民生活の中心的な争点となったのは食料品の物価高と消費税減税だった。その公約は決定権のない会議に預けられ、財源も税率も定まらないまま先送りされた。一方、政権が重視した制度的な法案は会期内に成立した。生活に直結する政策には慎重で、政権が成立させたかった政策は速やかに成立させた。疑念が生じるのは、この差である。

公約は本物だったのか

食料品消費税ゼロが、他の法案を通すための「おとり」だったと断じる材料はない。内部資料でも出てこない限り、意図は分からない。しかし、少なくとも結果として、それは選挙用の看板として機能した。8月上旬に首相がどの税率を選ぶかだけが問われているのではない。悲願と述べながらなぜ選挙前に財源を示さなかったのか、なぜ生活に直結する公約にだけ長い会議が必要だったのか、なぜ5か月の議論を経てなお判断が首相に戻るのか。この三点について、政府は説明する責任がある。

公約が本物だったかどうかは、会議の結論ではなく、財源と実施時期を伴う法案が実際に国会へ提出されるかどうかで判断するしかない。

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